ひるがえって、現在の日本のエネルギー政策にも、この「イノベーション」が不可欠です。オルタナ25号(2011年6月発行)の第一特集で『ウランも原油も頼れない』と指摘した通り、そのどちらも「限りがある資源」であり、いずれ枯渇することが目に見えています。
原油については、従来型の「安い原油」の採掘量はすでに2006年にピークを迎えたことを国際エネルギー機関(IEA)は認めています。いまは世界経済が軟調なので原油価格も低迷していますが、いずれ世界経済が回復すると、急騰する可能性は高いはずです。
ウランも、実は有限の資源です。ウランの埋蔵量の最も楽観的な見通しは550万トンで、世界の原発のウラン消費量は、国際原子力機関(IAEA)によると年間7万トン。つまり、ウランを経済的な値段で採掘できる年数は、約80年ということになります。
ここで、自然エネルギーやコージェネレーションを中心とした、次世代エネルギーや、その新しい利用法の開発で日本が得意の技術力を駆使していけば、日本が再び世界のビジネスにおいてリーダーシップを取れる日が来ると信じます。
いま日本のエネルギー業界でイノベーションを起こすためには、シュンペーターや中村邦夫さんが言うように、「破壊と創造」が必要です。ここで言う破壊の対象は、発送電が一体化した「旧体制」であり、旧来の市場であり、旧来の技術です。ちなみに、先進国で発送電が分離していないのは日本だけ。携帯電話並みの「ガラパゴス」状態なのです。
原子力発電は、いったん重大事故が発生するとリカバーが不可能で、リスクが大き過ぎる旧来技術です。原子力発電と早く縁を切ることが、エネルギー・イノベーションのためにも特に重要です。