もう一つの観点は「バックキャスティング」です。これはオルタナ15号(2009年9月発行)で特集記事を組みましたが、将来の「あるべき姿」をまず設定し、そこから振り返る形で、今後の道筋をつけていく経営手法です。スウェーデン軍での導入が嚆矢とされ、いまや北欧・西欧の先進的な企業の多くが導入をしています。
これを現代日本のエネルギー政策に取り入れるとすると、まず何年までに脱原発できるかを考え、そこに至るステップを組み立てていくわけです。
そこで現実的な数字は2022年、つまり日本未来の党が主張するように10年後です。ドイツのメルケル政権も2022年の脱原発を宣言しました。民主党が主張する「2030年代」は曖昧であり、また時間軸としても長過ぎます。
よく自民党や維新の会の候補者が、「原発の代替エネルギーがまだ定まっていないのに、脱原発だけ先に主張するのは無責任」と主張しています。
しかし、福島第一原発からはまだ毎時数億ベクレルもの放射性物質が放出され、事故収束のメドも立っていません。それなのに原発再稼動や、原発推進を唱えることこそ、「大いなる無責任」と考えます。
将来の目標や「あるべき姿」を先に考えるバックキャスティング的な思考方法は、「できることからコツコツと」と現状からの積み重ねを重視する日本人の考え方と正反対です。
よって、多くの日本人にとっては理解しがたい思考方法なのかも知れません。しかし、現状から積み上げていく今までのやり方では、画期的なイノベーションは生まれません。
以上の二つの理由から、オルタナ編集部は「卒(脱)原発」政策を支持します。(オルタナ編集長 森 摂)