「有明海・諌早湾(いさはやわん):日本初の大規模な環境復元」と題したシンポジウムが、1月12日に明治大学リバティタワー(東京・千代田)で開催される。主催は日本ベントス学会自然環境保全委員会。国営諫早湾干拓事業で失われた干潟環境を取り戻す意義を、生物学の視点から論じる。
同事業の発端は、農地拡大を目的とする1950年代の計画だった。89年に着工し、97年に7キロメートルに及ぶ堤防で干潟を閉め切った。総事業費は約2500億円である。
干潟は生物多様性に富み、海水浄化機能を持つ。日本生態学会や日本ベントス学会、日本魚類学会など生物学関係の研究者組織は、繰り返し国や地元自治体に事業中止などを求めてきた。
漁業者らは実害を訴え、福岡高裁は2010年12月に国に対して水門の常時開放を命じた。菅直人元首相は判決を受け入れたが、3年の猶予期間のうちに政権は自民党に移った。地元にも意見の対立が残り、いまだに開門は実現していない。
シンポジウムでは、諫早湾の貴重な生態系と地域の一次産業の存続を危ぶむ生物学者や弁護士らが、環境復元と地域再生について話し合う。(オルタナ編集委員=瀬戸内千代)