復興支援ボランティア団体「SAVE IWATE」(岩手県盛岡市)の紡ぎ組は、被災者にぞうきんを縫ってもらう活動を続けている。
紡ぎ組のスタッフは、2011年4月半ば、盛岡市につなぎ温泉の旅館が避難所に支援物資のフェイスタオルと裁縫道具を持参し、ミシンも使わずにできるぞうきん作りを始めた。大事な人を失った悲しみや無力感にうちひしがれる気持ちを手仕事でやわらげてほしいという思いからだった。
フェイスタオルから作られるぞうきんにはいろいろな模様や色があり、被災者が丁寧にこしらえている様子を見て、同年7月からは統一規格を作って売り出した。被災者から1枚200円で買い取り、タグの購入費など必要経費を載せて300円で販売中だ。
盛岡復興支援センターと盛岡市内にある消防団の建物の一角で交流サロンを開き、作ったぞうきんを持ってきてもらっている。
■ 販売数は4万枚以上、被災者の生きる糧に
紡ぎ組の担当者・山本成美さんは、「元は沿岸部に住んでいて内陸部に避難された方には、生活費のアップで困窮した人が少なくありません。『月にあと2、3万円あれば、生活できるのに』という方もいます」と説明する。
「入る際に選択の余地が少なかった仮設住宅では、ストレスで老人や子どもへの虐待があったり、顔見知りでない人々の間で交流を失って孤独死された方もいます。老夫婦だけで暮らすと無口になり、外出が苦痛になって孤立しがちです」
それを心配した娘が「ぞうきん作りをやらせてあげて。やることがあるだけでありがたい」と言ってきたこともあるという。
「サロンではぞうきん縫いに没頭できて、友達ができて、息抜きができます。『白い箱(アパート)の中でカラスを見ているだけだった。復興ぞうきんがなかったらどうなっていたか』と言った高齢者の女性もいました。このぞうきんは、『私たちは全国の人々に忘れられていない』と確かめるツール。今なおぞうきんの素材になるフェイスタオルを募集しているのは、そういうつながりを保ちたいから。被災者へ応援メッセージを送ってくださるだけでも嬉しいのです」
これまでに縫い手になった被災者は150人以上。今も90人以上が継続して縫っているという。2012年12月27日までの生産総数は4万4670枚、販売数は4万627枚。東京や兵庫、大分、千葉、静岡などでも販売している。(今一生)