働く人どうしが出資し、地域で必要とされる事業を立ち上げて営む「協同労働(ワーカーズコープ)」の姿を記録したドキュメンタリー映画「ワーカーズ」(森康行監督)が、2日より東京・中野のポレポレ東中野で公開される。主な舞台は東京スカイツリーがそびえる墨田区。少子化や高齢化、つながりの希薄化などといった地域が抱える課題に、ワーカーズコープが取り組む様子が描かれている。
■児童館、介護施設・・・手探りで絆を回復
映画に登場するワーカーズコープは、墨田区の委託を受けた「八広はなみずき児童館」のほか、働く人や地域などからの出資で設立された介護事業所「あゆみケアサービス」など計4カ所。若者や保育士、ヘルパーなど、ごく普通の人々が主人公だ。
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児童館では、かつて子供会が主催していた餅つき大会を引き継ごうとするが、運営のノウハウは継承が途絶え、失われている。スタッフの若者らは戸惑い、手探りしつつ、地元の人々の協力を得ながらイベントを成功させる。また、かつて熱血体育教師だった男性は、離婚や日雇い労働などの試練を経て、7年前からワーカーズコープに参加。高齢者を対象とした健康施設で指導員として働く。
映画で描かれるワーカーズコープの日常は決して華やかではないが、地域でつながりながら生きる安心感や、働くことで「社会に必要とされている」という生きがいを得ている様子が伝わってくる。
■法整備の遅れなどが課題
「協同組合の協同労働」とも呼ばれるワーカーズコープは、欧州では早くから実践されており、韓国でも2011年末に「協同組合基本法」が制定された。しかし日本でワーカーズコープに従事する人々の数は、現在約5万人にとどまる。
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ワーカーズコープを推進する「日本労働者協同組合連合会」の黒田志保氏は、日本で協同労働の普及が遅れている理由として「協同労働組合に関する法律が未整備で、事業体が適切な法人格を得られない。加えて協同労働の認知度が低く、働く人が経営に責任を持つという意識も浸透していない」と指摘する。
その上で黒田氏は「今の日本では、働く意欲があっても企業がその受け皿にならず、特に若い人の働き口がないのは深刻だ。映画を通して、利益や収入だけが目的ではない働き方、社会の役に立つ生き方もあるということが伝われば」と話す。
映画のナレーションは俳優の宮崎美子さんが担当。7日には森監督や城南信用金庫の吉原毅理事長らを招いたトークイベントも予定されている。(オルタナ編集委員=斉藤円華)