台所の生ごみを発酵分解するコンポスト(堆肥化装置)が、何と持ち運び可能なトイレに変身!? 便座を取り付けるなどの簡単な加工で完成し、材料費はわずか2万数千円。気になる使い心地も、製作者によれば「思った以上に快適」とのことだ。
■「大小分離」がミソ
普段は生ごみコンポストとして使える少人数用の持ち運びトイレを作ったのは、「安曇野パーマカルチャー塾」の臼井健二氏。同塾は長野県安曇野地域を拠点に持続可能な農的生活(パーマカルチャー)を伝授する講座を開いており、過去には実習の一環で常設型コンポストトイレを建設したこともある。
材料には市販の台所用コンポストを使用。容器内部は泥炭由来の園芸用土「ピートモス」で満たされ、生ごみ投入後に手でハンドルを回して撹拌することで発酵分解する仕組みだ。
臼井氏はこれに木の便座を取り付けた。また、最近のコンポストトイレで主流の「大小分離」方式も採用。「コンポストは水分が多いと発酵が進まず、しかも尿はべたべたして臭いも出る」ためだ。尿はじょうごで受けてタンクに貯める。これを水で3倍に薄めれば肥料として畑にまくことができる。
ピートモスには発酵を促す米ぬかと、脱臭効果が期待できる「もみがら燻(くん)炭」を混ぜる。便は水分が大半なので、正常に発酵分解していれば、使い続けてもコンポストがあふれたりはしない。ハンドルを回せばすぐに便が撹拌されるので嫌悪感も少なく、臭いもほとんどしないという。連続して使用できる期間の目安は3か月から1年ほどで、臼井氏は「扱いがとても楽。介護用や災害用にも使えるのでは」と話す。
ちなみにお尻を拭いたトイレットペーパーはどうするのか。臼井氏はコンポストに入れず、燃やして処理している。「炭素分を補う意味で、コンポストに紙を入れることは全く問題ない。ただし分解が遅く、白い紙がコンポストの中でバラバラになって目立つので、見た目が悪い」のだそうだ。
■来るか「適正技術」の時代
今日広く普及している水洗トイレは快適かつ便利だが、飲用可能な水道水を使ってし尿を下水に流し、しかもその処理には莫大なエネルギーを要する。だが歴史を紐解けば、かつて江戸時代から明治期にかけて、し尿は貴重な肥料として取引され、そこでは生産と消費、排出を結ぶ物質循環が成り立っていた。そして現在、コンポストトイレは環境負荷をかけずにし尿を資源化する方法として注目を集める。
臼井氏はコンポストトイレを「野ぐそと水洗トイレの中間にあるもの」と位置付ける。「今後、社会がローカリゼーションに向かう時、し尿も『どこかの他人任せ』ではなく自分たちで処理できるのが理想。コンポストトイレは地産地消や『身土不二』といった考え方に沿う『適正技術』ではないだろうか」(臼井氏)。失われた物質循環をよみがえらせる「身の丈に合った技術」がコンポストトイレという訳だ。
今回の持ち運びコンポストトイレの作り方などについて、臼井氏は3月に愛知県内でワークショップを開く予定だ。(オルタナ編集委員=斉藤円華)