投稿した作者の和人(かずひと)さん(26)は関西在住。いじめが原因で高校を中退した。
「醜形恐怖も出ていて、外に出ると気持ち悪いと言われそうで怖かった」
ひきこもっても、小さい頃から好きだった絵は描き続けていた。2ちゃんねるの絵を練習する掲示板に出合い、「本格的にやろう」と勉強を始めた。しかし、次第に描くのが辛くなってきた。
「ほめられたい、認められたい。そういう動機で描いていると頭がおかしくなりそうだった」
週に数時間しか描けない年月が続いた。もう努力できない、苦しい。あきらめて就職する方向に向かおう。苦しみをやわらげるために、したことがないことをしよう。
外に出るのはダメージが大きいので、まずは散歩から。次に筋トレ。旅行などお金がいることにもチャレンジしたい――。
外に出るようになって4カ月目、仕分けのアルバイトに応募した。
「絵をほめられることより、同じようにバイトを始めようとしているひきこもり仲間の手助けになればと思ったのです。2ちゃんねるの仲間と話していると、『バイトをしようとしても内容がわからないのが不安』という声が多い。自分の体験が、同じようになかなか一歩踏み出せない人の役に立てば」
アルバイト体験マンガ製作には1カ月半を費やし、ネット上に発表した。すると「すごいクオリティ」と評判になり、数日で話題になった。
「求人を見ても、『この職場はこんなに楽しい』と笑っている人の写真がアピールされていて逆に不安。苦しさが紹介されているほうが『このくらいのダメージなら耐えられる』と覚悟できる。なのでマンガでは、自分の苦悩と肉体的な疲労をしっかり描いた」
「引きこもり10年 仕分けバイト漫画」で検索すると、多くのブログに転載されているものが見つかる。(遠藤一)