毎週金曜夜に国会前で行われる脱原発デモの一角で、参加者に軽食を提供する「ゲリラカフェ」が好評を博している。いかにも物騒な名前だが、メニューは「ブランデーココア」や「りんごのスパイシータルト」など「ほっこり系」だ。
ゲリラカフェは昨年12月以降、雨の日を除いて毎週登場。都内で働く女性2人が運営している。メニューに価格はなく、飲食した人が気持ちの分だけ「投げ銭」するスタイルだ。毎回、用意したサンドイッチ20個ほどが全てなくなり、飲み物も5~60杯ほどの利用がある。これまで経費割れしたことはないという。
「寒いので、何か温かい物でも参加者のみなさんに提供できれば」と話すのは、スタッフの「サパ子」さん。本業のかたわら、もう一人のスタッフ「やすよ」さんと一緒に、駅から食材や魔法瓶などを満載したカートを引いてこの場所にやってくる。
元々はドラムを叩いて国会周辺を練り歩く「ドラム隊」のメンバーとして金曜デモに参加していたサパ子さん。「原発反対を訴え続けるのも大事だが、ストイックに続けるだけでは辛い。参加者が和んで、一息つける場を作りたい」との思いからゲリラカフェを始めた。やすよさんも「金曜デモには1人で来る人も多く、ゲリラカフェを通じて参加者同士が交流できたらいい」と話す。
昨年は数千人から数万人規模の参加者が詰めかけた金曜デモだが、取材当日(12日)は記者がざっと見た感じで2千人にも届かず、閑散とした印象を受ける。一方、ゲリラカフェには小さいながら人の輪ができ、デモ参加者が飲み物などを片手にスタッフらと談笑している。
「楽しいのはもちろん、この場があることで毎回、思いがけない人との出会いがある」とサパ子さん。福島から避難した人らと交流する機会にもなっているという。気温が上がるこれからの季節を前にして、スタッフ2人で「そろそろ冷たい飲み物も用意しようかな」と笑った。(オルタナ編集委員=斉藤円華)