国連やIAEAが「チェルノブイリ原発事故の最終的な犠牲者数は4千人」とした「公式報告」は被害を過小評価している、とする報告書をまとめたロシアの科学者が来日し、18日から22日にかけて各地で講演した。科学者は事故の教訓として「政府当局の安全宣言を信用してはいけない」などと訴えた。
来日したのはロシアのアレクセイ・V・ヤブロコフ博士。ゴルバチョフ・ソ連書記長(当時)のアドバイザーだった博士は1986年のチェルノブイリ原発事故以降、放射能汚染の調査や研究に従事し、2007年に『チェルノブイリ――大惨事が人びとと環境におよぼした影響』を発表した。
今回の来日は同書を邦訳した『調査報告 チェルノブイリ被害の全貌』がこのほど岩波書店から刊行されたのを機に実現。同書では、05年にまとめられたチェルノブイリ事故の公式報告が直接の死者数を50人、その後の犠牲者数を4千人と評価したのに対して「犠牲者数は少なくとも98万5千人」「ベラルーシでは健康な子供の割合が事故前の90%から事故後は20%以下に減っている」などと指摘している。
博士は20日夜に福島県郡山市内で講演。同書の成立について「事故に関する文献は4万点に上るが、その内の5千点を参考にした」と説明し、事故の影響について「がんは全世界で増えているが、放射性物質による汚染が激しい地域ほど罹病率が大きい」「被ばくにより血液、呼吸器系など、体の様々な場所で影響が出る」などと述べた。