EUがネオニコチノイド系農薬3物質の暫定使用禁止を決定したことに対して、住友化学は27日、「EUの規制措置は行き過ぎ」と反論する文書を発表した。同社はネオニコチノイド系農薬を製造する企業の1つ。
EUは24日、ネオニコチノイド系農薬3物質(クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサム)について、ハチを誘引する植物および穀物への種子処理、土壌散布、および葉面散布について、一部の例外を除き2013年12月から禁止することを決定。同措置はこれらの農薬への新しい知見が得られれば2年以内に見直される。
これに対して、クロチアニジン系農薬「ダントツ」を製造している住友化学は27日、「ミツバチの大量死、大量失踪とネオニコチノイド剤の因果関係が認められないにもかかわらず、予防的措置の考え方の下に使用規制するものだ」と文書で反論。取材に対して同社広報部は「米国などEU以外の地域では使用制限されておらず、行き過ぎた予防的措置だ」とEUの決定を批判した。
また、ミツバチの大量死とネオニコチノイド系農薬との因果関係を巡っては「ミツバチ大量死の原因は特定されておらず、農水省もネオニコチノイド系農薬が主たる要因とは認識していない」と主張。
その論拠の一つとして独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所が10年4月に発表した論文「ミツバチ不足に関する調査研究報告書」を挙げ、「ミツバチ減少の要因にはダニや伝染病も関係しており、ネオニコチノイド系農薬が主要因とは特定されてはいない」と述べた。
さらに「養蜂関係者、農薬使用者がミツバチの巣箱を設置する場所や期間、および農薬使用に関する情報を共有するなど、緊密に連携すればミツバチへの被害を防げる」と説明。「製品ラベルやチラシなどに注意を促す表記を行っている」としたが、「緊密な連携」を促すための取り組みを尋ねると「何もしていない」と答えた。
一方、「ミツバチ大量死はネオニコチノイド系農薬と強い相関がある」とする金沢大学の研究チームの論文については「担当部署で承知していると思うが、『因果関係は科学的に証明されていない』という当社の主張は変わらない」とし、今後もし因果関係が明らかになった際にはどうするかとの問いには「仮定の話は出来ない」と述べるにとどまった。(オルタナ編集委員=斉藤円華)