「ペーパータオルで除染」――福島県飯館村の「厳しい現実」

酪農家、長谷川健一氏自らが撮影・監督した「飯館村 わたしの記録」

福島の地元テレビ局などが制作した映像を通じて、原発事故後の福島の現状を共有する「福島映像祭2013」が、9月14日から20日まで、東京・中野のポレポレ東中野ほかで開かれた。その中で、飯館村から避難を余儀無くされた酪農家、長谷川健一氏が自ら撮影・監督した「飯館村 わたしの記録」(約70分)では、乳牛が殺処分に送られる様子や、家族が避難する前日の様子などが上映された。

上映会の後に、OurPlanetTV(アワープラネットティービー)白石草代表理事と長谷川氏のトークショーがあった。以下は、その際に長谷川氏が報告してくれた、現在の飯館村の厳しい現実だ。(オルタナ編集委員=高馬卓史)

除染は、ペーパータオルで行われています。果たして、それで、どれだけの除染ができるというのでしょうか。率直に申し上げて、「除染ビジネス」が横行しています。

今でも、記録として映像を撮り続けている理由は、村長が、何かにつけ「そんなことを言った覚えはない」といつでも言うからです。

村長は、「国、自治体の見解を待つ」と言いますが、自己責任で動かなければ、被曝に関しては、遅きに失ってしまいます。

さらに、政府が送り込んだ学者の言葉で、自主避難から村に戻ってきてしまった人もいるのです。

放射線障害防止法で定められた一般市民の被曝限度は「年1ミリシーベルト」ですが、飯館村は、その年1ミリシーベルト以上の放射線量のなかで、子ども達が遊んでいる。大人も平然と働いています。

これは、学者たちなどが、村民を洗脳してしまっているとしか思えません。さらに、経産省のキャリア官僚が、事故直後から、村長に張り付いています。

私は、3.11の福島第一原発事故直後に、酪農家として、東海村の原発事故後のことがすぐに頭をよぎりました。あの時にも、ホウレン草と牛乳から放射能が検出されました。

会場から、「飯館村の村民は、村長や自治体、東電、政府に怒っていないのか」とありましたが、これは、僕自身、驚いています。全体的に「大丈夫」という方向に誘導されていると申し上げます。

さらに、酷いことに、政府は、「除染をして、1ミリシーベルトを目指す」と言っているのに、飯館村の村長は、「5ミリシーベルトでいい」と言っています。理由は、「1ミリシーベルトなんて言っていたら、いつ村民が、村に帰れるか分からないから」と言っていますが、「いったい、村民の命をどう考えているのか」と、僕はかみついています。

「村を守る」ことに執着する村長と、命を守る母親との闘い。これが、長谷川氏の最後の言葉でした。

kouma

高馬 卓史

1964年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。総合情報誌『選択』編集長を経て、独立。現在は、CSR、ソーシャルビジネス、コミュニティ・デザインなどをフォロー中。執筆記事一覧

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