「水俣病を克服した」安倍首相発言が不穏当な2つの理由

「水俣条約」に署名する岸田文雄外務大臣(10月10日撮影、熊本市で)

「水銀に関する水俣条約外交会議」が熊本市で10月9~11日まで開催され、「水俣条約」が採択された。会議には約140カ国・地域から1000人以上が参加。問題になっている安倍晋三首相の「水銀による被害と、その克服を経た我々」発言は、その開会式で飛び出した。(オルタナ編集委員=奥田みのり)

本会議に加え、「水俣デー」と名付けられた9日には、参加者は水俣を訪問し、被害者の話を聞いたり、水俣病資料館などを見学したりした。

筆者は、ケニアの女性が涙を浮かべながら、車椅子に乗った胎児性水俣病患者を抱きしめる場面に立ち会った。彼女はその患者のことを「エンジェル」だと言い、心からこの出会いを喜んでいた。ある国連職員は患者にサインを求め、「この日のことを忘れない」と約束した。どの人も名残惜しそうに握手をして去っていった。

一握りのこうした交流は、条約が採択された本会議とは別の小さな部屋の片隅で行われていた。

安倍首相の「克服」発言は間違いであることは明らかだ。

第一に、日本政府は、水俣病においては「加害者」だ。被害を受けた側が、「水俣病は終わっていない」と言っているのに、加害者が独自に「克服した」と発言するのは一方的だ。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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