自由民主党の環境部会が12月4日、東北の巨大防潮堤をテーマに開かれた。議員や関連省庁職員らが集い、片山さつき会長の進行で、住民合意が得られない建設予定地の課題を共有した。予算消化の期限を気にして建設を急ぐ自治体の動きを踏まえ、財務省は「復旧予算も繰り越しは可能」と強調した。(オルタナ編集委員=瀬戸内千代)
計画されている防潮堤の高さは、最大約15メートル。国が示した約100年に1度の津浪の想定高に基づき、震災から約半年の時点で被災自治体が決めた。その後、景観や環境、維持管理費用などが各地で問題視され、事業は停滞している。
安倍昭恵総裁夫人は、「主人に聞くと、被災直後、津波が怖いから高い防潮堤をという声が実際に多かった」と予算が付いた背景を語った。
被災地訪問を重ねた夫人は、2013年10月に「東北の美しい未来を考えるフォーラム」を有志と主催。約300人の聴衆に「東京オリンピックの時に巨大防潮堤が建っているのは、本当に美しい日本の国の復興でしょうか」と呼びかけた。そこに片山会長を招待したことが、部会開催につながった。
部会には北川知克・環境副大臣も出席。環境省が11月中旬に仙台で「第1回アジア国立公園会議」を開き、「三陸復興国立公園」を中心とした「グリーン復興」を国際社会に宣言したことを報告した。
片山会長は、11月22日に衆議院が承認した国土強靱化基本法案の附帯決議の一文「事前防災及び減災その他迅速な復旧・復興においては、地域の特性に応じて、自然との共生及び環境との調和並びに観光地としての魅力ある景観の維持に配慮すること」を読み上げ、計画見直しの「機が満ちた」と表現した。
さらに、財務省の小野平八郎主計官は、復旧予算の5年期限について、「2015年度までに事業を完了せよ、ということではない。繰り越せば3年間使える」と明言し、別の復興事業への付け替えも「十分に可能」という見解を示した。
片山会長は、部会前夜に宮城県の村井嘉浩知事から電話があったことも明かした。村井知事は、これまで一貫して防潮堤は防災上不可欠と主張してきた。片山会長は会話の内容を問われ、「『柔軟に』とおっしゃっていた」と答えた。