福岡高裁が国に命じた諫早湾の開門期限は12月20日である。それに合わせて18日から22日まで、都内で演劇「有明をわたる翼」が上演される。弁護士と生物学者が脚本を書き、学会が後援する前例のない劇で、人間と自然との関係を問い直す。(オルタナ編集委員=瀬戸内千代)
国営の干拓事業で諫早湾の約3500ヘクタールの干潟が閉め切られた1997年以来、有明海ではタイラギの不漁やノリの不作が相次いだ。漁業者らの訴えを受けて、福岡高裁は2010年に、潮受け堤防の水門を5年間開けて調査することを国に命じた。その履行期限が今月20日に迫っている。
劇には諫早湾を訪れる渡り鳥や干潟の生物たち、そこで生計を立ててきた漁業者たちが登場する。脚本は、弁護士の堀良一氏と海洋生物学者の飯島明子・神田外語大学准教授、演出を担当する野崎美子氏が書いた。
飯島氏が所属する日本ベントス学会自然環境保全委員会をはじめ、日本魚類学会自然保護委員会や日本野鳥の会、WWFジャパンが後援する。
諫早湾を含む有明海は、日本ベントス学会が20年近く研究してきた海域である。その成果は、開門訴訟の原告側の証拠にもなった。
今回の劇も、飯島氏が立ち上げた「演劇企画フライウェイ」が科学的な正確さにこだわって制作した。スタッフやキャスト、演奏家などプロに依頼したため、クラウドファンディング「READYFOR?」で支援を募っている。既に目標額は達成した。