煮炊きするだけで発電も可能な「発電鍋」が、3・11を経験した人々を中心に売れている。大阪府池田市のベンチャー企業、TESニューエナジーが、東日本大震災の3か月後に発売を開始。国内外で年間1500個ほどの需要があるという。(オルタナ編集委員=斉藤円華)
■鍋底で「熱発電」
発電鍋「ワンダーポット」は、二重底の内側に「熱電変換素子」が組み込まれ、煮炊きすると発電。例えば、この鍋に水を入れて火にかけると、火の温度が500度ほどなのに対して、鍋の内側は100度となる。熱電変換素子は、鍋の内と外で生じる温度差を利用して電気を起こす。
この「熱発電」の仕組みは、19世紀に発見された「ゼーベック効果」に基づく。熱電変換物質は量産が難しいなどの問題を長らく抱え、熱発電を実用化する上での障壁となっていたが、2000年に独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)が酸化物(セラミック)による同物質の量産に道を開いた。
この技術を応用したのが発電鍋だ。「ワンダーポット」は鍋の大きさに応じて7~30Wの発電出力を持ち、スマートフォンの充電やLEDライトの点灯などに使える。さらに別売の「蓄電・インバータシステム」と組み合わせれば、電力消費の少ない一般的な家電製品を使うこともできる。
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