国際司法裁判所は3月31日、南極海での調査捕鯨が条約違反であるとの判決を下した。一方、調査捕鯨を行う共同船舶は、日本国内のイスラム教徒に対し、食の選択肢を広げようと、鯨肉の「ハラール認証」を取得した。水産庁は南極海での次期調査捕鯨は中止すると発表しているが、この鯨肉は今回の判決の対象外である北西太平洋で獲れたものだ。鯨肉でのハラール認証は、世界初の試みとなる。(オルタナ編集部)
ハラールとは、「イスラム法で認められたもの」という意味で、主に食品や化粧品などで認証が必要となる。
イスラム教を信仰する人たちは、教典上による生活様式の規定が多く、豚やアルコールを避けることもそのひとつ。こうした規定をクリアすると受けられるのがハラール認証だ。イスラム教徒にとって安心の印といえる。
今回、ハラール認証を取得したのは、食肉の加工施設を備えた特別製の調査捕鯨船「日新丸」だ。教典による豚の禁止とは豚の痕跡にも触れないことを指しており、そのため豚の全くいない船上で全ての加工作業を行う。
捕獲したクジラを浜の上に引き上げたりすることなく、甲板の上で加工、パッキングまで完結させる点が評価された。
こうして、2013年11月に一般社団法人国際イスラム交流支援協会(IICA)からハラール認証を取得した。今後はハラール認証商品専門店などでの鯨肉販売を予定している。
さらに、共同船舶は3月28日、東京・渋谷でハラール認証付鯨肉の試食会を行った。試食会では、日新丸が北西太平洋で採取したイワシクジラの刺身やカレー、ステーキがふるまわれた。
今回の認証を行ったIICAの事務局長である北口学氏は、「あまり知られていないが、クジラはイスラム教徒にとって聖なる食べ物であり、聖典・ハーディスの中にも描写がある。ハラール認証鯨肉を食べられるのは日本だけなので、日本観光の目的にもしてほしい」と述べた。
共同船舶は、南極海の調査捕鯨が条約違反であるという判決を受けて、「日新丸の捕鯨活動は北西太平洋で行われているため、ハラール認証クジラの今後の展開に対し特に影響はない」とコメントしている。