NHKが27日と28日に放送した、貧困問題をテーマとした番組に対して「自己責任や共助が強調されている」「なぜ社会保障の利用を呼びかけないのか」などとする意見がネット上に寄せられている。(オルタナ編集委員=斉藤円華)
NHKは27日夜、「NHKスペシャル」で「調査報告 女性達の貧困~”新たな連鎖”の衝撃~」を放映。ネットカフェに起居する姉妹などを取材し、若い女性が直面する深刻な貧困の実態を伝えた。翌28日朝のバラエティ番組「あさイチ」では「気づいていますか? 子どもの貧困」と題して、経済的に苦しい家庭の子供を取り巻く現状と、都内の主婦が地域で子供を支える取り組みを行う姿を紹介した。
ツイッターでは、これらの番組に対して「衝撃的」「他人事と思えない」との意見がある一方で「貧困の原因に全く触れていない」「自己責任と頑張りの強調だ」などという声も寄せられた。
貧困や格差などの問題に取り組む各NPOの代表も、相次いでツイッターに書き込んだ。NPO法人POSSEの今野晴貴代表は、あさイチで紹介された共助の様子に「近所の人が貧困な子供にご飯を食べさせ、勉強を教えているという『美談』。もちろん、その人は素晴らしいとおもうけど、これが理想化されてよいのだろうか」「福祉制度が充実することとセットであれば、理想的である」と表明。
NPO法人ほっとプラスの藤田孝典代表理事は「貧困問題の解決に自助や共助を持ち出すのは反則。まずは最優先に公助で救済されないといけない領域。その後の自助や共助はありえる」と指摘した。
また、NPO法人自立生活サポートセンターもやいの稲葉剛理事長も「どんな社会問題も地域や家族の絆で解決できる、と考えることを私は『絆原理主義』と呼んで批判しています。生活保護における扶養義務の強調、介護におけるボランティア活用や家族への押しつけ、自民党改憲草案の『家族の助け合い』規定など。最近の報道もそうした一連の流れで見ていく必要があります」と述べた。