米証券取引委員会(SEC)による「鉱物に関する情報開示の義務付け」を巡って、米国で混乱が続いている。開示義務が米国憲法違反であるとの判決が出たことがきっかけだが、収束は容易でない状況だ。情報開示を迫られてきた日本企業も成り行きを注視している。(オルタナ編集委員=高馬卓史)
SECの紛争鉱物情報開示問題は、2010年7月に成立した金融規制改革法(ドット・フランク法)が発端だった。ニューヨーク証券取引所など米国で上場している企業に対して、鉱物の調達先や調達ルートを開示することを義務付けた。
対象は上場企業だけでなくその取引先も含まれたため、多くの日本企業が巻き込まれた格好だ。
米国の法的定義によると、紛争鉱物とは、「3TG」と呼ばれるコロンバイト・タンタライト(タンタル鉱石)、錫石(スズ鉱石)、鉄マンガン重石(タングステン鉱石)、金(ゴールド)の4種類。米国務長官が非合法武装勢力の資金源になると認めたものだ。
「3TG」の原産地は現在、コンゴ民主共和国(DRC)とその周辺国(国境を接する9カ国)とされている。コンゴ民主共和国は、長年、内紛状態にあり、現政権を支持する米国は、反体制武装勢力の資金源を断つことを重要視している。
ところが4月14日、全米製造業者協会、全米製造物者協会、米国商工会議所、ビジネス・ラウンドテーブル(日本の経団連に相当)の提訴によって、米ワシントン特別区控訴裁判所が、米国憲法違反であるとの判決を出し、今回の情報開示問題が大きく迷走し始めた。