サッカーワールドカップをひかえ、2002年以来の優勝をめざす開催国ブラジルは、人々の熱気で包まれている。一方で、スタジアムなどが莫大な費用をかけて建設される状況に「ワールドカップなどいらない」と主張するデモが頻発するなど、世界でもトップクラスの格差社会を背景にした批判も噴出している。(ノンフィクションライター:高橋真樹)
◆ワールドカップを見ることができない子どもたち
大都市リオデジャネイロの丘の上に築かれた「ファベーラ」と呼ばれる巨大スラムでは、屋根もないような極度の貧困家庭と道を一本隔てた所に、プール付きの豪邸がそびえる光景も珍しくはない。華やかなワールドカップの裏では、貧困を原因とした暴力や犯罪、麻薬中毒、エイズ、そして家庭崩壊といった負の連鎖が続いている。
中でも、リオの路上にたむろするストリートチルドレンは、急激な経済成長を遂げてきたこの国の矛盾を象徴する存在だろう。この子どもたちは、自国で開催されるワールドカップすら見ることはできない。路上に出た子どもたちの多くは、犯罪に手を染めたり、ギャングや警察の抗争に巻き込まれ殺されているという実情がある。
そんな子どもたちと粘り強くつきあい、社会や家庭とのつながりを取り戻す活動をしている団体がある。「サンマルチーニョ慈善協会」は、子どもたちを保護し、社会性を学ぶワークショップなどを実施している。
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