映画「フタバから遠く離れて」が11月公開の続編へのカンパを募っている。同作は福島県双葉町民に密着取材したドキュメンタリー。舩橋淳監督は、「続編は最初から赤字だが、双葉町の人たちが落ち着く日まで、ずっと撮影を続けたい」と話した。(オルタナ編集委員=瀬戸内千代)
クラウドファンディング「Motion Gallery(モーションギャラリー)」では、7月9日まで、仕上げ編集費のための300万円を募っている。6月20日現在、達成率は82%である。
2012年に公開された前作の舞台は、埼玉県加須市にある旧騎西高校だった。同校に集団避難していた双葉町民は徐々に離散。町民の被ばく軽減にこだわった井戸川克隆元町長は2013年1月に辞職に追い込まれ、2014年度末に同校避難所は閉鎖、町役場機能は福島県いわき市内に移された。
現在、国は山積する除染ゴミの置場として双葉町に中間貯蔵施設の設置許可を求めている。続編では、前作以降のこれらの動きを追いつつ、「先が全く見えない」まま仮の生活を強いられている町民の日常を描く。
クラウドファンディング終了20日前の6月 19 日、最後の協力呼び掛けのため、舩橋監督らが都内でイベントを開催。双葉町シリーズの最新作、短編「放射能 Radioactive」を上映した。
上映後のトークセッションにゲストとして登壇した双葉町の女性は、漫画『美味しんぼ』で話題となった鼻血問題に触れ、「これを機に、なぜ福島県がきちんとデータを取ろうとしないのか、不思議でならなかった。既に県には、健康調査や病院の拡充のために相当な大金が入っている。有効に使ってほしい」と訴えた。
同じく双葉町の男性は、「牛を牛舎に入れたまま去り、白骨化させてしまった。1年経っても屋敷からその強烈な匂いがとれない。今も夢の中に可愛がっていた牛が出てきて辛い」と語った。
舩橋監督は、石原環境大臣の「想像力を欠いた」金目発言に触れて、「大切なのは『他人の痛み』への共感」と強調。続編について「見ている人が、そこにいる人の気持ちになれるような映画をつくりたい」と熱く語った。