「福島に生きる四世代の家族」を通して、3・11と東電原発事故に至る日本の姿を描いた劇映画「あいときぼうのまち」(菅乃廣監督、2013年製作、126分)の上映が21日から始まった。(オルタナ編集委員=斉藤円華)
作品は3つの時代を行き来する。太平洋戦争中、福島第一原発から50キロほど離れた石川町では、原爆開発のためにウランが採掘されていた。1966年、双葉町で、福島第一原発の誘致に向けて反対運動が切り崩された。そして2011年、南相馬市は3・11の大津波と原発事故に見舞われる。福島が日本の核をめぐる歴史と縁の深い土地であることが明かされるのだ。
そうした場所で生きることは「家族」にも影響を及ぼす。劇中、学徒動員でウラン採掘に駆り出された父は、原発建設を受け入れることができず、酒に溺れる。その娘も、町が原発の賛否を巡り二分するあおりを受け、新聞配達のバイトをクビに。さらにその孫娘は、東京で避難生活を送っている。そこでは女性が、「核の力」の前に振り回される人々を包容するかのように振る舞う。しかし彼女らもまた深く傷ついている。
町の目抜き通りに掲げられた「原子力 明るい未来のエネルギー」。ところが原発事故は起き、多くの人々が土地を追われた。自主避難した人も、とどまることを選んだ人も、多かれ少なかれ3・11の苦悩を引き受けて生きている。作品で描かれる「家族」は、福島をめぐる家族の今を映し出している。
劇中の東京はネオンもまばゆく、3・11など無かったかのようだ。映画の題名は、大島渚監督の映画「愛と希望の街」から取ったという。福島、そして日本に「あいときぼう」はあるのか。問いかける作品だ。