東電原発事故にともなう被ばく者の支援に役立てるため、チェルノブイリ原発事故後のウクライナでの事例に学ぶ勉強会が2日、都内で行われた。ウクライナを取材した独立メディア「アワープラネット・ティービー」の白石草代表は「現地ではチェルノブイリ法の下、被災者に対する保養と健診を実施することに異論はない」と話した。(オルタナ編集委員=斉藤円華)
白石氏は2013年11月、および14年6月にウクライナを訪問。チェルノブイリ原発から140キロの場所にあるコロステン市の健診施設や、被災者の保養を統括するキエフの社会政策省保養庁などを取材した。
チェルノブイリ法は、原発事故被災者の避難や生活、医療の支援を目的として、ソ連崩壊直前の1991年に成立した。同法は、事故による汚染地域を年間被ばく量によって4つのゾーンに区分。この内、最も汚染が低い第4ゾーン(放射能管理強化ゾーン)の線量は年間0.5~1ミリシーベルトだ。これにより、実に213万人が被災者として登録されている。
白石氏は「日本政府は報告書で『健康被害はなく、チェルノブイリ法は間違い』と評価しているが、正確ではない」と指摘。「ウクライナでは、チェルノブイリ法に批判的な人にも、被災者に医療や保養を保障する必要性が共有されている」とした。
一例として白石氏は、「国家戦略研究所」のオレグ・ナスビット研究員の証言を挙げた。ナスビット氏は白石氏の取材に「(年間被ばく量が)1ミリ以下の地域の住民に補償が支払われているのは問題」とする一方、「チェルノブイリ法による規制は必要だ。子どもの健康管理や給食、保養は絶対必要だ」と話したという。
その上で白石氏は、現地では被災者の治療と経済的支援を目的としたデータベースが整備され、登録者数が238万人に上る事を指摘。登録は被災者自身による申告制で、「この制度により被災者は『国に守られている』という安心感を得ている」と話した。