原発事故子ども・被災者支援法の実施状況を巡って8日、地方自治体の議員や避難者らが都内で政府と交渉を行った。参加者からは、政府の支援策が避難者の実情に即していないことを指摘する声が相次いだ。(オルタナ編集委員=斉藤円華)
交渉は「原発事故子ども・被災者支援法」推進自治体議員連盟ほかが主催。政府からは復興庁や内閣府、総務省の担当者らが出席した。
要望では、政府が避難者の意見を聞く場を設け、生活再建や医療福祉などの面で避難者を総合的に支援するための新たな立法措置を講じるよう求めた。これに対して政府は「(支援法の)基本方針に従って進める」と繰り返し、新たな立法には消極的な姿勢を示した。
避難者を対象に健康相談活動を続ける山田真医師は「政府は避難者の実情を知らない」と批判。「避難者への支援の実情は県や自治体によってまちまち。自主避難者には福島から情報が届かず、不安が広がっている。避難者のニーズを実際に聞いているのか」と問いただした。
これに対して政府担当者は「福島再生加速化交付金を活用して自治体に相談員を配置したり、住民意向調査を行ったりしている」と釈明。しかし交付金の対象事業は福島県内への定住や帰還の加速に力点が置かれ、対象地域も県内が中心だ。山田医師は「今の取り組みで、福島県外にいる避難者のニーズを汲み取る事ができるのか」と追及した。
そして、避難者の住宅確保に関しては、災害救助法に基づき居住期間を1年ごとに延長している現在の運用を改めるよう政府に求めた。また、新たな立法措置で避難者への長期の住宅供与を実現し、避難者の生活実態や意向に応じて更新や住み替えができる制度を実現するよう要望した。
政府は「恒久的な住居として公営住宅に住めるよう、避難者の応募要件を緩和している」と説明。これに東京都小金井市の片山薫議員は「そもそも公営住宅は応募倍率が高く、支援策として現実性がない。また、優遇する事で避難者が他の住民からやっかみを受ける事にもなる。避難者の柔軟な住み替えや転居という点で、公営住宅の活用は問題が多い」と指摘した。