自然エネルギー普及に向けて2012年7月から導入されたFIT制度(固定価格買取制度)により、全国で太陽光発電などの設備が急激に増加した。しかし、今年の9月末に九州電力をはじめとする5つの電力会社が、自然エネルギーの接続申し込みに対して「回答保留」などの措置を発表したことで、一部のメディアでも「自然エネルギーバブルの崩壊か?」などとして伝えられ、自然エネルギー事業者に大きな衝撃を与えている。(ノンフィクションライター=高橋真樹)
■「安定した地熱やバイオマスまで一括するのは不可解」
FIT制度では、電力会社に対して自然エネルギーの電力を優先的に接続するよう義務づけている。
しかし、電力会社側は今回の措置の理由として、各社が想定していた接続量を大幅に超え、これ以上増えると、自然エネルギーによる電力量が需要を上回り、需給バランスが崩れてしまう恐れがあると説明している。
この事態を受けて、自然エネルギー財団は、「自然エネルギーの中でも水力や地熱、バイオマスなどは天候に左右されず安定しているのに、それも一括して調整を求めるのは不可解である」として、声明を出した。
同財団は「必要なデータの公表もないまま、地域と事業者に多大な影響を与える措置を突如開始するのは、十分な説明責任を果たしているとは言えない」と主張する。
そうした意見が出る背景には、九州電力などが発表した接続合計量(設備認定は受けたが発電を開始していない量)が、実際の発電量とは大きく異なっていることや、現在認定されている設備がすべて稼動するまでには数年単位の時間がかかることなどがあげられる。
電力会社にとって危機的な状況とはいえない今の段階で、新たな設備の接続をストップしてしまう事は公正な判断とは言えない。
また、電力会社が自社の収益を考慮して、自然エネルギーよりも火力発電の稼動や原発再稼動を優先するとなると、送電網の公平な利用が損なわれる事になるだろう。
自然エネルギー財団は、このような現状を改善するために、現在議論されている発送電分離の実施はもちろんだが、それを待つ事なく、電力系統の公平な運用を実現する仕組みづくりを急ぐべきだとしている。