「川内原発再稼働反対」。29日夜、勤め帰りの会社員らでにぎわう東京・新橋周辺を、スーツ姿の市民がデモ行進した。「声を上げることは決して特別ではない」と企画された「脱原発☆スーツデモ」(同実行委員会主催)の列の中に、就職活動を終えた大学生の姿もあった。(オルタナ編集委員=斉藤円華)
■「言いたいことを言う」人生を選択
「半年前から就職活動を始めた」という東洋大4年の男性(20代)は、最終面接にこぎつけた会社で、面接官から次のように尋ねられた。
「この面接まで来れば、わが社への就職はほぼ決まったようなもの。今、関心があることは何か」
大学生は「エネルギーや脱原発に関心がある」と回答。すると会社側は「入社したらそういうのは忘れて、仕事以外のことは考えないでくれ」と大学生に迫った。
「会社員になっても口をつぐむのではなく、言いたいことは言う」。そう考えた大学生は、結局その会社への応募を辞退。後日、別の会社から内定を取ったという。
「御嶽山は噴火予知ができなかった。それなのに火山が近い川内原発を動かすのはおかしい」。大学生はスーツデモに参加した理由をこう話した。
■参加者「私たちも被ばくに直面」
スーツデモは昨年に続き2度目の開催。約200人が新橋駅前や東電本店前などを練り歩いた。参加者で会社員の男性(50代)は、毎週金曜夜に官邸前で行われる脱原発デモにも行く。
「脱原発は思想的に偏っている、というイメージが今でもある。しかし、私のようなサラリーマンがスーツを着てデモをすることで、脱原発デモへの周囲の視線も変わってくるのではないか」(男性)
西新橋の会社に勤める女性(50代)はツイッターでスーツデモを知り、終業後に駆け付けた。女性は「今も食品から放射性セシウムが検出されることがある。私たちの日常は原発事故の被ばくに直面しているのに、再稼働の手続きが進んでいる」と訴えた。