「ESD」(持続可能な開発のための教育)をテーマにした国連の世界会議が11月、岡山市と名古屋市であった。「雅子さまが久々に公務に出られた会議」と言われて、何となく思い出す方もいるだろう。でも、その中身は? 終始、分かりにくいと言われたこの会議、どんな意味や成果があったのだろうか。(オルタナ編集委員=関口威人)
■ 子どもたちに教えられた
ESDは「Education for Sustainable Development」。直訳すると「持続可能な開発のための教育」だ。2002年の国連地球サミットで日本政府が提案、2005年から「ESDの10年」が始まった。その成果を共有し、次の10年に向けた行動計画「グローバル・アクション・プログラム」を定めるのが世界会議の狙いだった。
名古屋で地元関係者による準備から本番までを取材した者として、あえて一言で表すならば、「大人が子どもに教えられた」会議だった。「教えた」ではない、「教えられた」だ。
もちろん、ESDにはそれなりの定義がある。だから大人はそれを精いっぱいかみくだいて子どもたちに教え込もうとしていた。
「未来を創る、わたしを育む」「あなたの毎日が、未来になる」
名古屋の街角には、むずがゆくなるほどの美辞麗句が並んだ。ああ、これはキレイゴトの会議なのだなと、妙に納得した。しかし面白いことに、ESDを学ぶ子どもたちは、それをさらに「純化」して表現してくれた。そして、そちらの方が実にストレートで、わかりやすかったのだ。
ESDとは「笑顔です」「つながりです」「助け合いです」――。
もちろん、中には大人に「言わされて」いたり、大人が気に入るように答えたりする子もいたのだろう。ちなみに文科省が採用したESDの愛称「今日よりいいアースへの学び」を考えたのは、小学6年生の女の子だったという。それはそれでいい。大人が気にしようがしまいが関係ないとばかり、子どもたちはやすやすとキレイゴトの世界に入り込み、生き生きと楽しんでいるようだったのだ。
■ 閉会式で「戦争をしないで」