東電原発事故にともなう住民の健康管理をめぐり、環境省が示した「当面の施策の方向性(案)」に対する国民からの意見募集(パブリックコメント)の締め切りが今日21日となっている。案は昨年末に同省の専門家会議が示した「中間とりまとめ」を踏まえたもの。(オルタナ編集委員=斉藤円華)
■野田市「甲状腺検査、県外も対象に」
中間とりまとめでは、被ばくによる健康影響について、福島県や近隣の県でがん発生率の上昇が見出される可能性は低く、他の病気についても同様と評価。また、福島県民を対象とした甲状腺検査は継続しつつ「疫学的追跡調査」として充実させるべきとした。
これを受けて案では、がんや他の病気の発生状況の把握、リスクコミュニケーションの充実などを方針として示した。また、甲状腺検査では「対象者に過重な負担が生じることがないように配慮」するとした。
千葉県野田市は16日までに根本崇市長の意見を提出。甲状腺検査の対象として「福島近隣県並びに汚染状況重点調査地域の住民」を加えることを求めた。
理由として意見では案の問題点に言及。「(原発事故)子ども・被災者支援法の目的にある、被災者の不安の解消及び安定した生活の実施に寄与することを、国の方針として取り組むという姿勢に欠けている」と指摘した。
その上で「野田市を始めとする汚染状況重点調査地域の住民には、子供の将来に不安を感じている方も少なくなく、私費を投じて健康調査を受診している」と現状を訴えた。
■「甲状腺がんの状況、深刻」批判的検討も
中間とりまとめに対しては、学者や市民らが批判的に検証し、13日にレポートを発表した。
その中で「(福島県民を対象とした甲状腺検査で明らかとなった)甲状腺がんの深刻な状況についての分析を行っていない」「(甲状腺検査を)疫学追跡調査へ見直すよう提言。個々人の健康管理がないがしろにされた」など、13の具体的問題点を指摘した。
また、「専門家会議の人選や運営にも問題があった」などとして「環境省は中間とりまとめを施策の根拠にするべきでない。施策の全面的見直しを急ぐべき」としている。