前回のコラムでは、イタリアのシラクサやパリで実践されている自転車シェアリングシステムを紹介しました。自転車シェアリングシステムから、どのようなことが学べるでしょうか。また、この仕組みの構築にはどのような秘訣があるでしょうか。「社会対応力」、「ウィン・ウィン関係構築力」、「グローバル人材育成力」の3点から考えてみましょう。(伊藤園 常務執行役員=笹谷秀光)
■「所有から利用へ」製品サービスシステムアプローチ
自転車シェアリングシステムは世界に広がりつつあります。かつて筆者が住んでいたパリやフランスの都市のほかにも、筆者が訪れたことのある街ではミラノの「バイクミー(BikeMi)」、ロンドンの「バークレー・サイクル・ハイヤー(Barclays Cycle Hire)」、モントリオールの「ビクシー(BIXI)」など多くの事例があります
私は1987~1990年には農林水産省から外務省に出向して、ワシントンDCにある在アメリカ合衆国日本国大使館で勤務していました。ここでも2008年に「キャピタル・バイクシェア(Capital Bikeshare)」が始まりました。
また、ニューヨークでは、市の運営でシティバンクが協賛するという仕組みで、名称もCiti Bikeが2013年に開始しました。2014年7月には専用の眼鏡型のグーグルグラスアプリ「City Ride for Glass」も発表され、利用者の位置情報から空き自転車情報や駐輪場の位置が検索可能です。このように関係企業のイノベーションも呼び込む共通の基盤(プラットフォーム)として育ちつつあることが注目されます。
「自転車シェアリング」の特色は、自転車という製品を所有せず、利用したサービス分だけ利用料を払うという、「所有から利用へ」という価値観に応えるものです。このような取り組みを「製品サービスシステムアプローチ」といいます。