大阪のとある公立小学校では「不登校ゼロ」を目標に、発達障害などに関係なく、全ての児童が同じ教室で学ぶ。その奮闘の様子を1年にわたり記録したドキュメンタリー映画「みんなの学校」(真鍋俊永監督、2014年日本、106分)が21日から東京・渋谷のユーロスペースで上映される。(オルタナ編集委員=斉藤円華)
■問題を「なかったこと」にしない
市立大空小学校(大阪市住吉区)は2006年開校。約220人の児童の内、発達障害など、特別支援教育の対象となる子どもは30人を超える。特別支援学級は設けず、全ての子どもが同じ教室で学んでいるのが特徴だ。
ここでは「全ての子どもの学習権を保証する」という理念に従い、校長をはじめ教師、保護者やボランティアが、生徒と一体となって学校をつくる。
教室を飛び出したり、暴力を振るったりと子どもたちの「問題行動」が相次ぐ中、校長自ら児童一人ひとりと粘り強く向き合う姿が印象的だ。体罰は厳禁。経験が浅い新米教師は叱咤もされるが、問題を一人で抱え込まないよう、職場全体で支えていく。大人にとっても、子供と向き合う一瞬一瞬が学びの機会となっている。
こうした努力の結果、大空小は「誰もが通い続けられる学校」と評判に。特別支援対象の子どもが多いのは、他校を「放り出された」児童が多く転校してきた結果でもある。
しかしそれにしても、これほどまでに特別支援を要する児童が多い、という事実に驚かされる。学校は社会と子どもを橋渡しする場だが、格差が増大し、常に競争と結果を求められ、強いストレスに晒され続けるご時世だ。社会に適応できない子どもが多いのは、むしろ当然であろう。
そうした視点で見ると、大空小は、特別支援学級への「隔離」で問題を「なかったこと」にしようとはしていない。校長、教師、地域、親、子どもが等しく「当事者」として社会に参加し、問題を自分ごととして引き受けようとする姿が、そこから見えてくる。