民間基金のアクト・ビヨンド・トラストは、ネオニコチノイド農薬問題の研究・啓発をテーマに、公募した助成企画案の公開発表会を3月1日(日)に都内で行う。助成総額は300万円で、今回で4年目。(オルタナ編集委員=斉藤円華)
ネオニコチノイド系農薬は強い神経毒性を有し、さらに植物内に浸透して分解しにくい。IUCN(国際自然保護連合)の「浸透性農薬タスクフォース」は昨年6月、ネオニコチノイドとフィプロニルが「作物や植物、有害生物種の枠をはるかに超えた悪影響をもたらす」とする評価書を発表した。
15年度の公募に寄せられた企画案は10件。公開発表会では、一次審査で絞り込まれた6件について、各提案者が発表する。会場は東京・品川の小山台教育会館で、14時開始。参加無料。
■脱ネオニコの動きを後押し
国内では現在、厚生労働省が食品中のネオニコチノイド系農薬(クロチアニジン)の残留基準を引き上げる手続きを進める。一方で、ネオニコチノイドの使用を削減しようという努力も続けられている。基金の助成事業は「脱ネオニコチノイド」の動きを後押しするものだ。
NPO河北潟(かほくがた)湖沼研究所(石川・津幡町)は昨年に続いて応募し、一次審査を通過。昨年は農家の協力の下、ネオニコチノイドの空中散布とあぜへの除草剤の使用をせずにコメを作る取り組みが採用された。収穫したコメは「生きもの元気米」として販売。「生物多様性アクション大賞2014」の部門優秀賞にも選ばれた。
「生きもの元気米」の栽培を通じて、ネオニコチノイドを空中散布しない区域が出現。企画案では、集落単位でネオニコ削減に取り組むことで、より大きな「ネオニコフリーエリア」をつくることをめざす。
日本自然保護協会は、生態学研究者や自然保護団体を対象に、浸透性農薬に関する普及啓発のためのシンポジウムを行う案を提出。同じく一次審査で選ばれた。
提案者の高川晋一さんは「ネオニコチノイドをめぐる科学的な議論が不十分で、緊急の課題だという認識が研究者間で共有されていない。政府や企業と対話していくためにも、多くの研究者が関心を持つべきだ」と話している。