ベトナム戦争で米軍が使用した軍用除草剤「枯れ葉剤」は、沖縄でも大量に備蓄され、さらに散布や土中投棄まで行われていた。『追跡・沖縄の枯れ葉剤――埋もれた戦争犯罪を掘り起こす』(ジョン・ミッチェル著、阿部小涼訳、高文研刊、税込1944円)は、退役米兵や元基地従業員らの証言をもとに、沖縄での枯れ葉剤使用の実態に迫る本だ。(オルタナ編集委員=斉藤円華)
■深刻な健康被害
枯れ葉剤はベトナムのジャングルや田畑を丸裸にしただけでなく、薬剤を浴びた住民や兵士にも深刻な健康被害を与え、影響は今も続く。製造したのは米国の化学メーカー。とりわけダウ・ケミカルやモンサントなどは、今日では作物の遺伝子組み換え(GM)技術で有名だ。
枯れ葉剤の中でも「エージェント・オレンジ」は、植物を枯らす力が特に強く、米国は大量に製造し使用した。増産を急ぐあまり、不純物として猛毒のダイオキシンが混入。エージェント・オレンジを浴びたベトナム住民や米兵に様々な病気が発生し、先天異常を抱えて生まれる子どもも見つかった。
こうした被害はベトナムでの散布によるものだ、と一般には思われている。ところが実際には沖縄でも枯れ葉剤が保管され、米軍基地内の除草に使われていた。また一部は、ジャングル戦の訓練が行われる本島北部の通称「やんばるの森」でも散布されたという証言がある。
沖縄で枯れ葉剤を浴びたという退役米兵にも、様々な症状が現れた。驚くのは平和運動に対しても使われたことだ。基地用地の強制収用に抵抗する、伊江島での非暴力の運動に業を煮やした米軍は、住民の耕作地に枯れ葉剤を散布。このことは当時の地元紙に報じられている。
英国出身のジャーナリストである著者は2010年から調査。米国が沖縄に枯れ葉剤を持ち込み、使用した事実を、退役米兵や元軍雇用員らに対する聞き取り取材の中で浮かび上がらせる。