世界には1000件以上の世界遺産がすでに登録されているが、参詣のための「道」としての登録は、日本の「紀伊山地の参詣道(さんけいみち)」とスペインの「サンティアゴ・デ・コンポステーラ」しかない。「古(いにしえ)の道」に対して私たちは何ができるのか、ユニーグループ・ホールディングスの百瀬則子・執行役員環境社会貢献部長と、和歌山県庁の山西毅治・観光局長が話し合った。(司会・森 摂=オルタナ編集長、写真・永谷正樹)

──日本で世界遺産は18件が登録されていますが、登録後に観光客が急増しても、数年たつと、右肩下がりになるケースが多いそうですね。
山西:幸い、熊野古道への観光客は、登録10年後もキープしています。2004年の登録直前は719万人、登録直後には820万人、10年後の2014年には801万人です。
その理由は、熊野古道は文化遺産ではありますが、社寺だけでなく「道」が世界遺産となっており、歩くことで、その素晴らしさを実感できる自然遺産的な要素があるからです。
もう一つは、いたんだ箇所を修復する「道普請(みちぶしん)」により、登録前から地域の皆さんが世界遺産の道を守る意識が高く、日頃から「道」を保全していることと、近年は企業や観光客の参加により、常に「道」が良好な状態にあることです。
―─2011年の台風による水害は、紀伊半島に大きな爪あとを残しました。古道にも被害があったのでしょうか。
山西:近代的な国道がズタズタになったにもかかわらず、熊野古道の被害は一カ所だけ。それも斜面上部からの土砂崩れが原因で、道自体が崩落したわけではありません。
ただ、大半が土の道なので、やはりいたみます。観光客が来てもいたむ。雨が降っても、土が流されます。そこで、世界遺産の道を後世に良好なままで伝えるため、特に企業の社員の方に来ていただいて、「観光と道普請」、いわば「保全と活用」の一石二鳥を楽しんでいただきたいのです。
■次世代につなぐ責任がある