「退職時に迷惑料として60万円請求された」(家庭教師会社)「給与の一部がネギや冷凍ご飯など『現物支給』された」(居酒屋)「熱が出たので『明日休む』と伝えたら店長に『うちのアイスを食べたら熱が下がるから来い』と言われた」(大手アイスクリームチェーン)――これらはエイプリルフールの冗談ではなく、実際にアルバイト現場で起きていることだ。信じがたい労働実態がまかり通る「ブラックバイト」の実態と対処方法を知る企画が3月31日、都内で行われた。(オルタナ編集委員=斉藤円華)
■最近は「賠償請求」が増加
企画は「ブラックバイトで潰されないために」と銘打ち、「全国ブラックバイト告発キャンペーン」が主催。主な対象は大学生だが、明治大学中野校舎の会場には高校生の姿もあった。
病気のアルバイト店員が「アイスを食べたら熱が下がる」と出勤を強要された事例について、ブラック企業被害対策弁護団の佐々木亮弁護士は「無茶な出勤のさせ方は安全配慮義務に違反する」と指摘する。
佐々木氏はまた、「もし出勤が原因で病気が悪化すれば、企業そのものの責任が問われる。仮にノロウイルスやインフルエンザに罹っている人が勤務したとなれば、飲食業では感染拡大の危険もあり、社会的悪としか言えない」とも述べた。
この他にもブラックバイトの事例が紹介された。「恵方巻きの販売ノルマが達成できず、罰ゲームとして節分当日、店の前に立って4時間無給で売り子をさせられた」(ローソン)「他の従業員に向かって『生理休暇してごめんなさい』と謝罪させられた」(居酒屋)など、枚挙にいとまがない。
外食チェーンの「なか卯」では、着替えなどの準備を済ませてからタイムカードを出勤打刻するよう指示。しかし勤務準備の作業は雇用者の指揮監督下にあるため、労働時間に含まれなければならず違法だ。
さらに最近では、様々な理由をつけて企業が賠償を請求する事例も目立つ。佐々木氏は「レジを打ち間違えるなどのレベルで損害賠償を負う必要はない。仮に重大な過失でも全額賠償はありえず、会社に言われるままに支払うのはやめるべき」と話した。