世界的なCSRの動向のなかで主流化してきた人権への取り組みだが、子どもの権利と企業の責任を明確につなげる枠組みとして、「子どもの権利とビジネス原則」(CRBP)が2012年3月に発表された。シリーズ「ビジネスと子どもの人権」では、「CRBPの10の原則」を分かりやすく説明していく。第2回は原則1を扱い、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン「子どもの権利とビジネス」担当の森本美紀氏に寄稿してもらった。
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ビジネスと子どもの関わりはもはや製品の製造過程などの企業活動における児童労働の課題だけではない。企業のCSR、人権デュー・ディリジェンス、課題解決型のソリューションビジネスが盛んに議論される中、どこにギャップを見出し手を付けたらいいのか、その判断が難しい。そこで切り口となるのが、子どもの権利とビジネス原則(Children’s Rights and Business Principles – 略称CRBP)10原則の中核的存在の原則1である。
子どもの権利とビジネス原則には、原則1「全ての企業は、子どもの権利を尊重する責任を果たし、子どもの権利の推進にコミットする」とある。
■方針によるコミットメント
上記の観念的な一文をかみ砕いて伝えると、「子どもにとって何が悪くて何が良いのかを理解し、企業の方針やプロセスに位置づけ、ビジネスにおいてより良い取り組みを進めましょう」ということである。
どのような企業方針、製品、サービス、マーケティング、広告が子どもにとって良いものなのかを考えるために、その出発点として子どもの権利条約である4つの原則「子どもの最善の利益」、「差別の禁止」、「子どもの参加」、「生存と発達」を認識する。その上で企業理念やCSR方針に子どもの権利の尊重・推進に対するコミットメントを表明することが次のステップになる。
そうすることで、サプライチェーンにおける労働環境、製品や施設の安全性、インフラ建設における住民や子どもへの影響などに取り組むべき課題があるかどうかを分析することが可能になる。
■人権デュー・ディリジェンス