「同族企業には原則がある。外部の者以上に働かない限り、一族を働かせてはならない」 ピーター・ドラッカー 『チェンジ・リーダーの条件』
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創業者の大塚勝久会長と長女の久美子氏が互いの退任を提案して株主の支持を争った大塚家具のお家騒動は、3月末の株主総会で久美子氏側の提案が採択され、勝久氏の取締役退任が決まった。
今後同社の経営が立ち直るかは、ひとえに久美子社長の手に委ねられることになったが、改めて世襲経営の難しさを感じさせた。
企業経営を巡って親子や兄弟が対立した事例は、日本でも枚挙に暇がない。全国400万の企業のうち約95%は家族経営とされるなか、お家騒動や骨肉の争いは決して珍しくない。
企業の成長において「世襲がプラスかマイナスか」もよく話題になるが、これはケース・バイ・ケースだ。「良い世襲」か、「悪い世襲」か。その分岐点は次の5つのポイントに集約できるだろう。
1) 子どもに経営者としての資質があるか(学力や真面目さ、人柄の良さだけではない、器、存在感、判断力、コミュニケーション能力が不可欠。子どもがそれを持っているかどうかは、高校生のころには分かる)
2) 番頭格(最も厳しい社内幹部)が賛成してくれるか(社内で重要な人物が一人でも反対するようであれば、その世襲は正しいとは言えない)
3) 家族が賛成してくれるか(特に、妻・母親の視点が重要だ。女性たちには男性には見えないところも見えている)
4) 経営移譲後、子どもに口を出さない自信はあるか(口を出さない自信がなければ、継がせるべきではない)
5) 親は、禅譲の後、代表権を返上できるか(代表権を返上することが、口を出さないための最も確実な担保となる)