「事業報告がなかった」「いや事業報告は行なった」。使用済みペットボトルのキャップをリサイクルした売却益が、主な目的であるワクチン寄付に使われなかった問題で、当事者である2つのNPO法人の主張は真っ向から対立している。(オルタナ編集委員=斉藤円華)
■ワクチン支援実績、ウェブに掲載
NPO法人「エコキャップ推進協会」(横浜市)は、全国から集まったキャップの売却で得た利益から、NPO法人「世界の子どもにワクチンを日本委員会(JCV)」(東京・港区)へ継続的に寄付を実施。2013年8月までの寄付総額は1億2400万円余りに達した。
ところが翌9月以降、何の説明もないままにJCVへの寄付を中断。売却益は障がい者の雇用環境整備費を中心に充てたという。その理由について「(JCVから)ワクチンの寄付先や本数などについて一度も事業報告がなかった」「寄付の強要があった」などとする主張を17日、自らのサイトに掲載した。
これに対してJCVの担当者は「事業報告書は毎年1月から2月の間に郵送していた。寄付の強要もしていない」と反論。JCVのサイトを見ると、毎年の支援実績が掲載され、それによれば13年の支援総額は約1億6900万円。支援先は6か国で、ミャンマーだけでBCGワクチン55万人分、ポリオワクチン約16万7千人分などを供与したとする。
「事業報告がなかった」ためにJCVへのワクチン寄付を中断したとエコキャップ推進協会は主張するが、JCVはワクチンの支援実績を公表しており説得力に欠ける。同協会は23日、取材に対して「担当者が外出している」と答えた。
同協会は「世界の子どもたちにワクチンを届ける」ことをキャップ回収の大きな目的に掲げてきた。事実、14年までの7年間で、支援総額の約6割をJCVへの寄付が占める。その経緯からすれば、外部に事前説明もなくワクチン寄付を中断した同協会の対応はやはり誤りだろう。
以前から「エコキャップ運動」をめぐっては「キャップ1キロのリサイクル過程で2キロのCO2が排出される」など、様々な批判がある。加えて今回、情報開示や意思決定をめぐる不透明さが露呈。多くの市民や学校、企業が運動に協力していただけに、非営利活動全体の信頼低下さえ懸念される状況だ。