ネオニコチノイドに代表される「浸透性農薬」が生態系に及ぼす影響について、科学者グループが2014年6月に発表した「統合評価書」の日本語版がこのほど完成した。研究者らでつくる「ネオニコチノイド研究会」(平久美子代表)が翻訳。民間基金アクト・ビヨンド・トラストのサイトで公開されている。(オルタナ編集委員=斉藤円華)
IUCN(国際自然保護連合)に助言を行う中立の科学者グループ「浸透性農薬タスクフォース(TFSP)」は昨年6月に「統合評価書」を発表。この中で、植物内部に浸透し昆虫などの神経系に作用する浸透性農薬について1121本の論文を評価した結果、「生物多様性に悪影響を及ぼす」「現在の使用規模は持続可能ではない」などとする結論をまとめた。
その上で同評価書は「ネオニコチノイド系およびフィプロニルに対する規制強化、および世界的規模での使用の大幅な低減に向けた計画策定の検討」を提言している。
作業はTFSPの科学者30人が5年をかけて実施。評価対象は査読付き学術論文で、化学メーカーが資金援助したものも含まれる。
■「環境保全型農業への使用は本末転倒」
国内では現在、ネオニコチノイド系農薬のクロチアニジンについて、食品中の残留基準を緩和する手続きを国が進める。
国際環境NGOのグリーンピース・ジャパンは日本語版の発表を受けて7日に声明を発表。「日本ではネオニコチノイドが『農薬をまく回数を減らす』という名目で『特別栽培』などの環境保全型農業に用いられるなど、本末転倒な使用が続いてきた」と指摘。「これが重大な間違いであることを、生産者も消費者もはっきり認識すべき」と訴えている。