齊藤 紀子(企業と社会フォーラム(JFBS)事務局長)
今回は、2014年9月18・19日に早稲田大学で開催したJFBS第4回年次大会における企画セッション1「持続可能性とブランド・マネジメント」における報告・議論内容をご紹介します。いかに持続可能性をブランド・マネジメントに組み込んでいくか、B to C企業とB to B企業による取り組み事例をもとに議論が行われました。
■ブランド向上の推進役となるステイクホルダーは誰か
トビアス・ビエレンステイン氏(ブランディング研究所業務執行役員、ドイツ)は、企業ブランドと企業の評判について概念整理をしました。
①企業が発信する経営理念やコーポレートデザイン、ブランド・アイデンティティなどを顧客・従業員・取引先・株主・NGOなどのステイクホルダーがそれぞれに評価するため、ステイクホルダーごとの企業評判が異なること
②ステイクホルダーによる積極的な反応・行動が、サステナビリティ課題への企業の取り組みを促すこと
③企業はステイクホルダーごとのブランド/評判のマネジメント方策が必要であること--などと指摘しました。
太田建氏(キリンCSV本部CSV推進部企画担当主幹)からは、B to C企業としての同社の取り組みが紹介されました。同社では2013年1月、キリンビール、キリンビバレッジ、メルシャンの統合による国内総合飲料新体制が発足しました。
これに合わせて「ブランドを基軸とした経営」を目標に掲げ、CSVの実践と(三事業体の統合後の)「ワンキリン」ブランドの創出を図っています。商品を通じて社会的課題に取り組むことにより、顧客にとっての社会的価値を創出し他社と差別化していくこと、企業全体のブランドを強くし競争力を強化していくことが意図されています。