齊藤 紀子(企業と社会フォーラム(JFBS)事務局長)
前回に引き続き、2014年9月18日・19日に早稲田大学で開催したJFBS第4回年次大会における企画セッション2「サステナビリティ戦略と新興市場」における報告内容をご紹介します。3人のゲストスピーカーより、新興市場においてビジネスとして利益を確保しながら社会的課題を解決しようとする取り組みについてお話いただきました。
アハメッド アシル准教授(九州大学大学院システム情報科学研究院)からは、情報通信技術を用いて途上国/地域で情報を享受・発信できていない人々の所得を増やすことを目的とした、九州大学とグラミングループの協働プロジェクトについて報告が行われました。
いまもなお、地球上で一日に4000人もの子どもたちが下痢で命を落としています。下痢そのものは難しい治療技術が不要な症状であり、適切に水分を補給すればよいのですが、WHOの調査で調査対象の母親の7割が下痢の子供に水分を与えていないことが明らかになりました。
携帯電話が広く普及し、いまや途上国においても9割の人々が携帯電話を持っている にもかかわらず、正しい情報が伝わっていないことを示しています。そこでアシル准教授は、情報が伝達していないところにいかに届けるか、情報発信が行われていないところの情報をいかに拾うかということを問題意識として本プロジェクトを進めています。
アシル准教授は、先進国が開発途上国の社会的課題を正しく捉えておらず、多くの場合根本的な解決策を提示できていないということを指摘しました。例えば目を患う子供がいる場合、先進国は医者や医薬品を送るとともに診療技術を提供するというアプローチをとりますが、これに対してグラミン流アプローチは、ビタミンA不足を原因と判断しホウレン草を栽培、摂取するという根本治癒を図ります。