「基地跡地の地中からドラム缶」。沖縄では、返還された米軍用地で相次いで土壌汚染が発覚している。嘉手納基地に隣接した沖縄市サッカー場からは、ダイオキシン類や「枯れ葉剤」の成分などが検出され、使えない状況が続く。基地返還後の跡地利用に影を落とすこの問題に対する行政の対応は遅れ、監視も十分とは言えない。(オルタナ編集委員=斉藤円華)
■返還後に汚染発覚、跡地利用の障害に
沖縄市サッカー場では2013年6月、改修工事中にドラム缶が掘り起こされた。その中には枯れ葉剤を製造した米国の化学メーカーの一つ、ダウ・ケミカルの名前が表記されているものがあった。また同年10月から翌年にかけて行われた沖縄防衛局、および沖縄市による追加調査で、ドラム缶付着物の全61検体、およびドラム缶底面土壌の全29検体からダイオキシンが検出。また、たまり水2検体のうち1検体からは、枯れ葉剤成分も検出された。
発掘当初から現地メディアは、ドラム缶の内容物について「枯れ葉剤ではないか」とする報道を継続。しかし調査では、検体からダイオキシン類に加えてヒ素やフッ素などの有害化学物質も見つかっている。
「枯れ葉剤の有無ばかりに社会の注目が集まると、枯れ葉剤成分が検出されなければ『汚染は大したことはない』という風潮にもなりかねない」。NGO「沖縄・生物多様性市民ネットワーク」共同代表の河村雅美さんは危惧する。
基地跡地でドラム缶が見つかったのは沖縄市の例だけではない。02年には北谷町で、射爆場だった土地の再開発にともない215本が発掘されたが、サンプル採取が行われたのはわずか1本だけだった。
「基地汚染による住民の健康や環境への影響を把握するには、汚染物質がどのように移動し、また地下水に入り込んで拡散していないかなど、汚染範囲や被曝の経路を調べる必要がある。しかしそれができていない。むしろ問題が拡大化するのを恐れ、うやむやにされてしまった事例も多いのでは」(河村さん)