世界的なCSRの動向のなかで主流化してきた人権への取り組みだが、子どもの権利と企業の責任を明確につなげる枠組みとして、「子どもの権利とビジネス原則」(CRBP)が2012年3月に発表された。シリーズ「ビジネスと子どもの人権」では、「CRBPの10の原則」を分かりやすく説明していく。第3回は原則2を扱い、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン「子どもの権利とビジネス」担当の森本美紀氏に寄稿してもらった。
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児童労働はまだ存在するのだろうか。経済の発展に伴い多くの生産拠点が国内からアジアやアフリカに移され、日本に暮らす私たちが「児童労働」を実際目にし、その実在を実感することは難しい。しかし、私たちの身近な製品の生産過程等において、未だ1億6800万人の子どもたちが児童労働に従事しているといわれている。(公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン=森本美紀)
その半数以上にあたる8500万人は、子どもの健康、安全もしくは道徳を害するおそれのある「危険有害労働」で働いていたとされており、その業務は農業、工業、建設業、製造業、サービス業、家事労働と多岐な産業にわたる。
国際労働機関(ILO)の条約にて定められる「最低年齢」の遵守及び、危険有害労働、性産業や子ども兵士、また強制的な奴隷労働への従事など「最悪の形態の児童労働」の撤廃に向けた各国の法的枠組みの整備や、企業のサプライチェーンにおける取組みの強化、NGOによる啓発活動や教育支援活動の推進により、児童労働の数は2008年から4700万人減少したといわれている。
一方、その数の減少には、法規制の網を逃れ、児童労働が工場や農地などの目に見える「職場」から、社会から見えにくい非正規産業部門における「内職」や「家庭内労働」に場所を変えつつあるという背景があるのではないかと懸念されている。