「自給しなければ、よその国から奪うことになる」。沖縄本島北部の大宜味村に住む儀保昇さん(60才)は、亜熱帯の「やんばるの森」に囲まれながら有機農業を営む。農薬を使わない野菜を作り続けながら、最低でも週1回、辺野古や高江など、反基地運動の現場に駆けつける生活を続けて22年。7日に都内で行われたイベント「第8回ゆんたく高江」(同実行委員会主催)に登壇した。(オルタナ編集委員=斉藤円華)
■シイを使って原木しいたけを栽培

儀保さんの「クワァチブル(石頭)農園」では、畑の草取りはニワトリやヤギの役目。雑草がなくなった頃を見計らって、野菜の種をすじ蒔きする。「もう長いこと耕していない」と儀保さん。不耕起栽培で育った作物は、生産者グループを通じて消費者に届く。
生活排水はため池で水草のホテイアオイが浄化。金魚が住めるまできれいになった水は畑の灌漑に使われる。一方、増えすぎたホテイアオイは平飼いするニワトリのエサ(緑餌)となり、ムダにならない。
農園では原木しいたけも生産している。原木のシイはやんばるの森から切り出した。森には広葉樹も多く、伐採すると脇芽が成長して樹冠がブロッコリーのようになる。やんばるの森は「ブロッコリーの森」とも呼ばれ、住民が森を利用してきたことを示しているという。
森はその大半が米海兵隊の「北部訓練場」に指定されているが、儀保さんは「森はもともと住民の入会地。自然観察だけでなく、住民の生産の場でもある」と話した。
農園から、東村高江にある北部訓練場のオスプレイパッド(垂直離着陸機着陸帯)までは約25キロ、辺野古までは約40キロ離れている。儀保さんは高江に8年、辺野古へは19年も通い続ける。「基地はいらない。私にとって平和運動に関わるのは当たり前のこと」と儀保さん。高江では計画されている6つのオスプレイパッドの内、すでに2か所が完成した。
やんばるの森は沖縄本島にとっての「水瓶」でもある。儀保さんは「北部訓練場全部がダムの集水域。沖縄の人、そして観光客のためにも訓練場は撤去しなければならない」と話した。