[CSR]花王・カネボウも化粧品の動物実験廃止--資生堂などに追随

美しさに犠牲はいらないキャンペーン実行委員会と花王グループ役員との意見交換の様子(提供:美しさに犠牲はいらないキャンペーン実行委員会)
美しさに犠牲はいらないキャンペーン実行委員会と花王グループ役員との意見交換の様子(提供:美しさに犠牲はいらないキャンペーン実行委員会)

花王はこのほど、ソフィーナやカネボウを含む化粧品全ブランド(医薬部外品を含む)について、開発段階での動物実験を廃止したことを明らかにした。動物実験が虐待に当たるとのNPOの批判や、欧州委員会の販売規制に対応した形だ。日本の大手化粧品メーカーで動物実験を廃止したのは、資生堂、マンダム、コーセー、ポーラ・オルビスホールディングス、日本メナード化粧品、ノエビアホールディングスに続き7社めとなる。(オルタナ副編集長=吉田広子、編集部=佐藤理来)

6月22日、3つの動物保護団体で構成する「美しさに犠牲はいらないキャンペーン(CFB)実行委員会」が花王を訪問し、常務執行役員やカネボウ化粧品の執行役員ら5人と意見交換を行った。その席で、花王がCFB側に動物実験廃止の決定を伝えた。

CFBは、動物実験の廃止を求める会(JAVA/東京・渋谷)、アニマルライツセンター(東京・渋谷)、PEACE(東京・豊島)の3つの非営利団体からなる。特にJAVAは20年にわたり化粧品メーカーに対し、動物実験の廃止を訴えてきた。

カネボウ化粧品を含めた花王グループはこの日の会合で、「化粧品と医薬部外品(薬用化粧品のみが対象)について、新規原料を配合する医薬部外品(薬用化粧品のみが対象)の承認申請・化粧品基準の改正要請など薬事申請も含めて、開発に際しての動物実験は廃止した」ことを表明した。

輸入化粧品に対して動物実験を課している中国への輸出や、化粧品による事故が発生した場合の原因究明など、動物実験を例外的に行う条件を設定しているものの、JAVAの亀倉弘美理事は、「過当競争のなかで特に大企業にとって手放しがたかった新規原料開発部門を放棄した。その方針をグループ全体で共有し、公表したという事実は極めて大きな決断だろう」と評価している。

さらに、新たな課題も見えた。亀倉理事は「『動物実験を廃止した』と公言しているにもかかわらず、原料メーカーが動物実験を行っているようでは、動物実験を行わないという方針が機能しているとは言えない。原料調達先をはじめとするサプライチェーン全体で共有され、順守されて初めて機能するもの」と指摘している。

オルタナの取材に対し、花王広報部は「CFBからの要望は認識している。現在開示している原材料調達ガイドラインに動物実験に関する項目は入っていないため、今後、原料調達先での動物実験については対応を検討する」と回答した。

EU(欧州連合)は2013年3月に化粧品の動物実験が全面禁止し、米国やブラジルなどでも動物実験廃止に向けて、取り組みが進んでいる。これに対して、日本の厚生労働省は、化粧品の動物実験問題での規制はなく、取り組みは他の先進国に比べて著しく遅れている。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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