電力小売自由化の実施を来年に控える中、先行するドイツの事例に学ぶ勉強会が24日、都内で行われた。エネルギーシステムに詳しいドイツの専門家は、電力自由化の達成で重要な要素として送配電部門の分離などを挙げた。(オルタナ編集委員=斉藤円華)
■大手電力会社のシェア、6割に減少
勉強会は環境NGOのグリーンピース・ジャパンが主催。「未来エネルギーシステム研究所」のメンバーで、欧州エネルギー規制当局(ACER)委員なども務めるウーヴェ・レプリッヒ氏が講演した。
ドイツは1996年のEU指令を踏まえて98年に電力自由化を施行。現在、4つの送電事業者、900の配電系統運用者、電力小売事業者1千社が電力セクターを構成し、一般家庭の2割が大手電力会社以外から電気を購入している。
しかし当初からこのような陣容が整ったわけではない。「(制度が機能する)前提条件がそろうまでに5年を要した。それで初めて電力会社を選べるようになった」と同氏は話す。その「前提条件」が発電および小売部門からの送配電部門の分離だ。発電所と送電網の所有権を切り離して発電所への優遇を防ぎ、配電網と電力供給者の組織を分離することで、新たな電力供給者が不利なく市場に参入できるという。
また同氏は、送配電部門に支払われる「託送料金」の高止まりを防ぎ、送配電市場を形成するための規制機関、および電力取引所の整備も重要だとした。これらを通じて電力会社間に競争が促され、電力市場の透明化、電力卸価格の抑制、市場支配力の縮小などの効用が生まれると指摘。ドイツでは2009年、電力大手4社による発電量は82%を占めていたが、12年で68%、現在では約60%に減少している。