国は東電原発事故で生じた避難者への支援を打ち切り、帰還を促す考えだ。避難者は今なお12万人に上るとされる中、原子力災害対策本部は6月、「居住制限地域」および「避難解除準備地域」を2017年3月までに解除する方針を示した。これに歩調を合わせる形で福島県も、自主的避難者を対象にした借り上げによる無償住宅供与を17年3月に終える。「帰還の強要」に抗議する避難者らが2日、都内で会見した。(オルタナ編集委員=斉藤円華)
■避難者の大半「戻らない」
復興庁が3月に発表した避難区域の住民に対する意向調査結果では、避難者の約半数が「戻らない」と答え、「まだ判断がつかない」という回答も3割近い。「戻りたい」と答えた割合は、最も多い浪江町でも17.6%にとどまる。
会見はNGO「FoE Japan」が主催。「チェルノブイリ被害調査・救援」女性ネットワークの吉田由布子事務局長は、福島とチェルノブイリとにおける原発事故後の政策を比較した。UNSCEAR(国連科学委員会)報告を主とした被災者数では、どちらも700万人を超えるという。
また、チェルノブイリ事故では年間被ばく線量が5ミリシーベルト(mSv)以上での移住が義務付けられるが、日本では同20mSv以下での居住を認める。そのため、国が予定する避難解除により、住民が年間に受ける線量は放射線作業従事者の年平均被ばく線量よりも高くなることが予想される。「放射線作業従事者は、被ばくをできるだけ低く抑えるよう管理される。しかし農林業で働く人などの場合、誰にも管理されずに放ったらかしにされかねない」(吉田氏)