世界的なCSRの動向のなかで主流化してきた人権への取り組みだが、子どもの権利と企業の責任を明確につなげる枠組みとして、「子どもの権利とビジネス原則」(CRBP)が2012年3月に発表された。シリーズ「ビジネスと子どもの人権」では、「CRBPの10の原則」を分かりやすく説明していく。第4回は原則3を扱い、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンのアドボカシー・マネージャーである堀江由美子氏に執筆してもらった。
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労働力人口が減少し、ライフスタイルや働くことに対する価値観が多様化する現在、企業が労働・人権基準に配慮しながら人材の定着とモチベーションの向上を図るためにも、ワーク・ライフ・バランスをはじめとする「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)(※1) 」に係る取り組みはますます重要視されている。(公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン=堀江由美子)
「子どもの権利とビジネス原則」の原則3:「若年労働者、子どもの親や世話をする人々に働きがいのある人間らしい仕事を提供する」は、子どもの親や扶養者である労働者、また弱い立場に置かれやすい若年労働者に対するディーセント・ワークの提供を通して、子どもの権利を守り、推進するための企業の責任と貢献を促す原則である。労働者の権利を守るばかりでなく、労働者の子どもの権利をも実現する視点を持つことで、新たなアプローチが開けてくる。
(※1)ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)
生産的かつ公正な収入が得られる機会を提供する仕事を指す。ディーセント・ワークは職場における安全や家族への社会的保護、労働に際しての諸権利、社会的対話、個人の成長や社会的統合へのより良好な展望を齎す。就業が認められる年齢に達している若年労働者を含め、人々は自らの生活に影響を及ぼす決定に関して懸念を表明し、組織を作り、参加する自由をもち、平等な機会と処遇を得る権利を有している。