「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングが7月13日、バングラデシュでの新事業立ち上げを発表した。「脱貧困貢献・市場成長両にらみ」と報道するメディアもあるが、実際に「両にらみ」するものなのだろうか。この機会にBOP(ボトム・オブ・ピラミッド)ビジネスについて考えたい。
■ 成長戦略の一環としてのBOPビジネス
世界の実質GDP成長率は4%前後と予測されている中で、日本はその半分だが、中国・インドのような新興国ではその2~3倍が見込まれている(IMF見通し)。また現在70億人近い世界人口は、2025年には80億人、2050年には91億人にまで増える国連の予測があり、今後新興国・途上国の急激な成長が見込まれることは容易に想像ができる。
しかし、化石燃料に依存する従来型の社会経済システムでは持続可能な成長がないことも明白である。既に稀少資源の取り合い、せめぎあいは経済問題化しているなか、成長市場において新しいビジネスモデルをいち早く築き、先行者利益を確立する経営戦略は合理的である。そのためのBOPビジネスは有用な選択肢の一つとも言える。
ファーストリテイリングは、従来から(1)生き残るためには成長するしかない、(2)内需も外需もなく、舞台はグローバル、(3)意味があるのは日本一ではなく世界一だけ、すなわち「Winner takes all」を明言し、英語を公用語化してグローバル市場での経営戦略を推し進めてきた。
■「脱貧困貢献」は達成しえないのか?
『ネクスト・マーケット』の著者プラハラード氏は、「慈善事業やCSR は、貧困層と大企業との結びつきをある程度は強め、大きな貢献をもたらすかもしれないが、企業の中心的な活動と結びついているとは言いがたい。大企業の活力や経営資源、イノベーションを持続させるには、BOP への取り組みが企業の中心的使命でなければならない」と述べている。
CSRの論客、藤井敏彦氏(経済産業省参事官)も「BOPでビジネスをする際に、そのやり方を工夫することで社会問題や環境問題に対処することがBOPにおけるCSR」と整理をしている。
「貧困地域でビジネスをすることは社会貢献の一環」という発想をすれば、BOPは企業における大きな投資判断の外に置かれてしまい、結果として貧困問題の改善は先送りになってしまうからだ。
坂本文武:ウィタンアソシエイツ取締役シニアコンサルタント(専門:PR・CSR)