イオン環境財団は10月20日、第4回「生物多様性 日本アワード」の授賞式を国際連合大学(東京・渋谷)で開催した。応募総数126件のなかから、シカ問題に取り組むエゾシカ協会(北海道札幌市)がグランプリに選ばれた。このほか、優秀賞として伊藤園、九州の川の応援団・九州大学島谷研究室(福岡県)、グラウンドワーク三島(静岡県三島市)、気仙沼市立大谷中学校(宮城県気仙沼市)が選ばれた。(オルタナ副編集長=吉田広子)
イオン環境財団は、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)の開催に先立ち、生物多様性の保全と持続可能な利用の促進を目的として、2009年に「生物多様性 日本アワード」(国内賞)を創設した。2010年に創設した「生物多様性みどり賞」(国際賞)と隔年で開催している。
第4回を迎えた今年は、126件の応募があり、グランプリには表彰状と副賞200万円、優秀賞には表彰状と副賞100万円が与えられた。
グランプリを受賞したエゾシカ協会は1999年からシカ問題に取り組み、個体数管理、被害防止、資源利用を合わせた「資源管理」を模索してきた。北海道ではエゾシカによる農林業被害が深刻で、道内の野生鳥獣による被害額約53億円のうち、9割を占めるという。
そこで、同協会は、エゾシカを単なる害獣として殺すのではなく、適正に管理することを目指し、衛生管理体制の提案に加え、「シカの日」を設けるなどシカ肉の普及活動にも取り組んできた。
毎月第四火曜日をシカ肉の日とすることで、飲食店や販売店でシカ肉の普及が進み、流通量が増加したという。
2007年には厳しい衛生基準をクリアしている解体作業場の製品の認証制度を整え、これまでに13の認証処理場が誕生した。2012年からは認証処理場で処理された肉の加工食品の認証制度をスタート。2015年からは、肉の検査者となるシカ捕獲者の認証制度創設にも取り組んでいる。
優秀賞に選ばれた伊藤園は2008年から琵琶湖環境保全活動を実施している。2010年に開始した「お茶で日本を美しく。」プロジェクトでは、全国201の支店を活動支援拠点として位置づけ、消費者・行政・NPO・コミュニティと連携しながら、水環境の保全活動を行っている。
記念講演では、東京農業大学農学部の長島孝行教授が「生物多様性に学ぶものづくり インセクトテクノロジー」と題した講演を行った。蚊に学ぶ痛くない注射針、蛾の目に学ぶ無反射フィルム、タマムシ発色のチタンなど、生物の特性を生かしたユニークなモノづくりを紹介した。