日本上陸10年目を迎える家具インテリア大手のイケアが、気候変動の問題に全面的に取り組むことを表明した。今年12月にパリで開催されるCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)では、オフィシャル・スポンサーとなる。それに先立ち、世界約30カ国、年間累計約7億人の顧客に向けて、サステナビリティキャンペーンを展開する。(オルタナ編集委員=瀬戸内千代)
イケアグループは2020年までのサステナビリティ(持続可能性)戦略で、「ピープル・アンド・プラネット・ポジティブ」という方針を掲げている。気候変動を深刻にとらえつつも、前向きに、快適さを手放さずに地球への負荷を減らす商品やアイデアを顧客に提供している。
■ 持続可能な「オネストフード」を提供
イケア・ジャパンは、今回のキャンペーンで、ラッキィ池田氏が振り付けしたテーマソング「未来を照らせ、LED!!」の動画を公開する。白熱球より二酸化炭素排出量が85パーセント少なく20倍長持ちするLEDへの切り替えなどを陽気に伝えている。
LEDは近年価格が下がり、品ぞろえも充実した。イケアグループは2012年に白熱球、2014年に蛍光灯型省エネ電球、今年8月にハロゲン電球を使った商品の販売を停止。今年9月から、世界の全店舗でLED照明だけを扱うことにした。
食品売り場や店内レストランでは、顧客の健康や地球の環境に貢献するオネストフード(嘘のない食品)の提供に力を入れる。
魚食の国スウェーデン発祥のイケアは、グループ全体で認証取得済みの魚介類を23種も扱っている。イケア・ジャパンでは、まず3種類の提供を始めた。持続可能なASC認証済みの養殖サーモンと、MSC認証済み漁業で獲られたニシン、エビである。
■ 使用電力の41%が自然エネに
イケアグループは二酸化炭素の排出削減のため、2009年以降、風力・太陽光発電施設に約2000億円を投資しており、すでに使用電力の約41パーセントを自然エネルギーで賄っている。さらに2020年までに、約800億円を主に風力発電に投資して、エネルギーの完全自給を目指す。
イケア・ジャパンのピーター・リスト代表取締役は、難民キャンプでの干ばつや日本の鬼怒川で起きた洪水などの被害を振り返り、「地球温暖化の影響でさまざまな異常気象が起きている。3年前に米国を襲ったハリケーン・サンディは、その典型。イケアも米国内9店舗を一時閉鎖し損失を被った。気候変動は国や人々、ビジネスに直接的な影響を与える」と語った。
イケア・ファウンデーションは、気候変動に最も影響を受ける地域を支援するために、2020年までに約600億円を寄付するという。リスト代表取締役は、「どこか遠くの話ではなく、今ここで起こっていること。変化を起こすには、多くの人々の参加が必要だ」と強調した。