世界的なCSRの動向のなかで主流化してきた人権への取り組みだが、子どもの権利と企業の責任を明確につなげる枠組みとして、「子どもの権利とビジネス原則」(CRBP)が2012年3月に発表された。シリーズ「ビジネスと子どもの人権」では、「CRBPの10の原則」を分かりやすく説明していく。第7回は原則6を扱い、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン「子どもの権利とビジネス」担当の森本美紀氏に寄稿してもらった。
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少子化が進む中、子どもが持つ財布の数は両親と両祖父母の「6ポケット」から増え続け、叔父叔母を含めた「10ポケット」存在するといわれている。年初めにもらったお年玉の使い道の大きな決め手となるのは、子どもたちの目や耳に留まりやすいテレビやインターネット上の広告ではないだろうか。
経済活動は私たちの暮らしと切っても切れないものであり、広告は日常生活のどこにでも存在している。本稿で着目したい点は、広告が子どもに及ぼしうる影響のみならず、発育発達途上の子どもたちは、健やかな発育を妨げるような営利表現から守られ、更に自身の成長、環境、未来のことを考え、成長を促すような情報を得る権利を持っているという視点である。
「子どもの権利とビジネス原則」の原則6:「すべての企業は子どもの権利を尊重し、推進するようなマーケティングや広告活動を行う」は、企業のマーケティング・広告活動が子どもの健やかな成長に負の影響を与えず、なおかつ子どもたちの自尊心や健全な生活スタイル、非暴力の価値を促進すべきであるとする。
市場における子どもへの影響は、子どもに対する精神的、道徳的、身体的な害を考慮すべきであるが、それは原則5の「製品とサービスの安全性の確保」だけでなく、企業がマーケティングや広告活動において発信する情報に関しても配慮されるべきである。なぜならば、現代のマーケティングや広告はあらゆる手法を駆使し、消費者の消費行動に影響を及ぼすわけだが、子どもは大人よりもそうした営利情報に影響されやすいからだ。
■広告と番組の区別がつかない子ども
子どもはまだ消費者としてもトレーニング中であり、情報の性質を理解するための能力を養う発展途上にある。ある調査によると、6歳以下の子どもは番組と、番組の間に流れるコマーシャルの区別がつきにくいとされ(※1)、番組で登場したキャラクターやコンテンツがコマーシャルに含まれていると、余計にその傾向が強くなるということが調査でも実証されている(※2)。
※1 米国心理学会 (2004) “The APA Task Force on Advertising and Children”:https://www.apa.org/pi/families/resources/advertising-children.pdf
※2 山下玲子・藤井達也. ホストセリングをしっていますか?:日本の子ども向けテレビCMの実態. 春風社、2015